Dr.なごみの玉手箱

医師です。内科の専門医をしています。勤務医の仕事の傍ら、医師の日常の暴露や、医療ニュースのかみ砕いた解説をお届けします。

医師の給与①

なごみです。今日は医師の給与シリーズの第1回ということで、ぶっちゃけ医師の給与ってどうなの??ということを書いていこうと思います。

 

結論から書くと、

医師の平均年収は1169万円。

 

この出典は下記の

医者の年収:勤務医、開業医、診療科別に「医者の平均年収」を大公開…年収1億円の医者はどんな人なのか?(幻冬舎ゴールドオンライン) - Yahoo!ニュース

https://news.yahoo.co.jp/articles/a406dfd50a035623e649939cfb6cbed718b0efe2

 

ですが、この記事によると、

医者の平均年収は1169万円。これは、厚生労働省による「2019年賃金構造基本統計調査」から試算した、従業員10人以上の職場における数字です。

 

とのこと。統計は統計で、客観的な事実ですし、数字は嘘はつきませんから、結論としては上記の通りで間違いはないかと思います。

ただ、実際に医師として働く私からすると、この数字だけでは医師の実際の収入状況の実態をよく把握はしていないと思います。

 

どんな統計もそうですが、その対象や背景などを詳細に見ないと、裏に隠された事実は見えてきません。

具体的に医師の収入に関して検討しないといけないこととしては、

 

①医師全体の平均ではなく、勤務医と開業医、勤務医とすれば大学病院と民間病院との違いではどうかを確認する。診療科によっても給与は異なる場合がある。

②医師は通常1か所の病院のみで勤務をすることは少なく、外勤先で副業(アルバイト)をしていることが普通です。その収入が加味されているかどうかを確認する

③副業は外勤アルバイトだけではありません。その他の医師によくある臨時収入について確認する

④その収入(対価)を得るために必要な労働条件を確認する(これは、その収入が持続可能かどうかを確認することにもなる)

⑤実際に医師になるまで、あるいは医師になってからかかる費用、開業するのに必要な費用を確認する

⑥医師の昇給過程(何歳からこのくらいの水準になるのか)を確認する

⑦収入だけでは見えない、福利厚生について確認する

 

 

私は医師として働きながらも自分の収入相場を確認するために、インターネット等でなんども調べたことがありますが、①②は多くの情報サイトでも書いてあることが多いかなと思います。ですが、それも一般の方にはもしかしたらなじみがない情報もあるかもしれません。

③について記載されているサイトはかなり少ないと思います。特に、講演会の単価や、回数、その準備時間などについて解説しているサイトはほぼ見たことがありません。

④については、曖昧な情報が多いように思います。これについては医師の労働条件の話にもなりますので、別シリーズでも取り上げたいと思います。

⑤については、とても大事な情報であり、いくつか解説しているサイトはありますが、私からも改めて別シリーズで解説したいと思います。

 

⑥は、生涯賃金という意味では最も大事なポイントなのですが、かなり気を付けてみないとこのポイントについて解説しているサイトはほとんどありません。実は、医師の給与がほかの職業に比べてより有利なのは私はこの部分が大きいと思います。つまり、医師(勤務医)は他の職業と比較して、最大到達収入が極めて多い訳ではありませんが、1000万円の大台に収入が到達するまでの期間が極めて早く、かつよほどのことがない限りそれはほとんど定年などなく働き続ける間持続できるという点です。

 

一方、⑦については現役の医師であっても意識している人はほとんどいないと思います。実際に、私もかなり最近になるまでこのあたりは意識していませんでしたし、いくつかの病院での勤務歴がありますが、いずれの病院でも福利厚生について事前に正しく説明してくれた病院はありませんでした。退職金があるのかないのかについてすら、説明してくれた病院は皆無でした。(よく調べると書いてあった病院はある)。

この⑦について解説しているサイトはほぼ見かけることはありません。しかし、多くの方が会社を選ぶ際に福利厚生を重視するのと同様、本来は医師にとってもここの部分はとても大事な部分のはずです。たとえば退職金の有無だけでも、生涯収入は数千万円は変わるのですから。なぜこの部分がおろそかにされているのか、これは医師に限らず医療者全体が気がつくべき構造的問題があるのですが、それについては別記事で詳しく解説します。

 

⑧その給与が諸外国と比べてどうなのか。その国の物価基準と比較してどうなのか。

ーこの視点で書かれた記事を見たことはあまりありませんが、これからの時代、これは医師に限らずどの職業でも考える必要のある情報だと思います。

個人的に興味がありますので、このことについてもまた別記事で考察したいと思います。

 

⑨医師として生活する上で、かかる費用の問題。

実は、医師として生活するのは、(見栄だけではなく)、お金がかかりますし、かつ優れた医師として活躍しようと考えればよりお金がかかります。

このあたりの実践的な部分についても今後お話ししたいと思います。

 

このように、医師の収入について解説しようとすると、とても1記事では書ききれないほど大量の情報を解説しないといけないことが分かりました。

ただ、とても大事なことではありますので、時間をかけていくつかのシリーズに分けてゆっくりと解説していこうと思います。

 

 

          なごみ